北側から見たまつもと市民芸術館
なんでこう、新築されたばかりの建築物を見に行くと心がウキウキするのでしょうか。たまりません。
まつもと市民芸術館は、あがたの森通りに面していて、西側に信越放送(SBC)、東側にはNHKと、テレビ局に挟まれた形で建っています。まずは外観をぐるりと見学してみます。建物の周辺は、所々に幅1~2m程の水路があります。
外観の大きな特長は、今回開発された、手作りガラスが象嵌(ぞうがん)*1された、GRC(ガラス強化繊維プレキャストコンクリート)板と、緩やかなカーブを描く曲面壁でしょう。GRC板は場所によって、象嵌されたガラスの密度が違っていて、不規則に配置されているのが良い感じでした。
![]() 手作りガラスが象嵌されたGRC板と、おにぎり型の窓ガラス |
![]() アルミキャストパネルの壁 |
東側には、独特の形状の凹凸で、濃淡の付いた2種類のアルミキャストパネルを、チェッカー模様にしてある外壁がありますが、なかなか渋い感じがします。また建物の中央あたりに搬入口があり、見学した時にちょうどシャッターが開いたのですが、シャッターは上下ではなく左右に開閉するタイプでした。しかも曲がり角の為、レールにそってシャッターもカーブしていくのは珍しかったかなと思います。
南側に回ると、既存の植栽と共にいくつかの石碑が建てられていました。内容についてはあまり見なかったのですが、確か4つか5つぐらいあったと思います。
館内に入るとすぐに、幅が広く緩やかな階段が目に入ってきます。が、それよりも注目して欲しいのは、その横にある傾斜トラベーター。トラベーターとは、空港などによくある動く床の事です。 傾斜のあるトラベーターに乗るのも初めてでしたが、なによりもカーブを描く様に登って行く為に、ガラスの壁が奥から奥から現れて、凄い空間でした。これはぜひ体感して欲しいです。 |
![]() 1F エントランスから見る階段 ![]() 2F シアターパークから見る階段 |
傾斜トラベータから見るGRC板の壁 |
2階に上がると、正面に舞台があり、その奥に大ホールがあります。観客は、大ホールを180度囲む形のホワイエ*2を歩いて、ホールに入れる様になっているのですが、生憎一般客(入場券を持たない客)はその手前までしか入れず残念でした。当然大ホールの中も、小ホールの方も見学はできませんでした。既に雑誌や新聞で、大ホールの写真をご覧になった方も多くいると思いますが、舞台の方から客席を眺めると、火の鳥が羽を広げ、今にも飛び立とうとしている感じです。馬蹄型のホールと、グラデーションになっている赤色の客席と壁がその正体です。この建物の一番の見所だと思います。
![]() カーペットのグラデーションと一体にデザインされたベンチ |
2階のシアターパークやホワイエに設置されているベンチは、カーペットのグラデーションと一体になるようにデザインされています。このベンチもなかなか変わった形で、座った時に、足を折り曲げてベンチの内側に入れられるのが良かったです。 2階の北側にはレストランがあり、地元の食材で、和食をベースにした創作料理を出しています。レストランのランプがなかなかお洒落だったのですが、天井から繋いでいるケーブルが細く、エアコンの風で終始揺れていましたが、大丈夫でしょうか…(笑) |
![]() レストランのランプと、窓ガラスから見える松本の街並み |
![]() トップガーデンと呼ばれる屋上。芝生が新しく踏み心地が非常によかった |
トップガーデンと呼ばれる屋上には、芝生が敷き詰められていて、新しいせいか非常に踏み心地が良かったです。所々にライラックやサルスベリ、ヤマボウシと言った広葉樹が植栽されており、元々この場所にあった、公園の緑を保存する声に答えた形になっています。 |
![]() 北東から見た建物外観 |
![]() 象嵌されたガラスが密集しているGRC板 |
![]() 東側の喫煙所への出入口 |
【用語解説】 by goo辞書(三省堂提供「大辞林 第二版」より)
*1 象嵌(ぞうがん) | : | 工芸品の加飾法の一。地の素材を彫って、その部分に他の材料をはめこんで模様を表す技法。主に彫金で用いるが、木・陶磁・蒔絵(まきえ)などでも用いる。彫金では糸象眼・平象眼・布の目象眼・高肉象眼などがある。 |
*2 ホワイエ | : | foyer(フランス)。劇場・ホテルなどの休憩所。ロビー。 |
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